パズル


164463_01.jpg

まさか、山田悠介の原作から傑作が誕生するとは……

現在「ライチ☆光クラブ」が公開中(早く観たい!)の若き鬼才、内藤瑛亮監督が2013年に発表したデスゲーム映画。
以前から評価は聞いていたんですが、山田悠介原作というとてつもなく高いハードルが邪魔をして今の今まで未見……しかし、先月に出向いた「鬼談百景 オールナイト」にて鑑賞した「続きをしよう」「どろぼう」「牛乳王子」で完全に内藤監督にやられてしまったこともあり、「先生を流産させる会」と続けてようやく観た次第です。

「CUBE」や「SAW」以降、デスゲームを題材にした、いわゆる「ソリッドシチュエーションスリラー」が大量生産されましたが、二匹目のどじょうたちは例によって例のごとく、まともな鑑賞に耐えうるモノはごくわずか。
原作の山田悠介デビュー作にしてヒット作「リアル鬼ごっこ」に関しては、発表した年からして、どちらかというと派生というより源流にあたる作品なのでしょうが……まあ世間的な評価のほどに関してはAmazonレビューなりなんなり、ネットで検索していただければと思います。個人的にも生涯ワースト(というか「作品」としての体をなしてるのかさえ危うい)と認識している逸品でございます。
なので、当然今回の「パズル」、原作を読んでいません!(キッパリ)
見もしないで批判するのはポリシーに反するのですが、山田悠介だけは別枠ってことで、ひとつ。
まあ原型を留めていないほど改変しているらしいので、問題ないでしょう。

で、今回の映画版「パズル」なのですが……結論から書いてしまうと、どこをどう切り取っても内藤印の傑作!と、言う他ない素晴らしい作品でございました。
とはいえ、「ソリッドシチュエーションスリラー」としてのジャンル的快楽を期待して観ると裏切られてしまうかも。
本作は、「世界」に居場所を見つけられない。生の幸福をつかむことができない……
そんな、まさに中二病的な――だけど心から切実な願いを孕んでいる少年少女のお話なので。

まず冒頭からして引き込まれる。
トイレに閉じこもっている見るからに内向的な少年が、見るからにイケイケな同級生男子に連れ出されるというシーンで「あー、これはやられちゃってるな」と、思いきや――というミスリード。
そこから学校教育の偽善的同調圧力をシームレスに描き、その直後に本筋の発端となる美少女の投身自殺……という流れのスマートさ。
そして、このシークエンスでもって既に、映像でもテーマが語られているんですよ。
本作、このオープニングをはじめとして、ほぼ全編がソフトフォーカスになっている。光が滲んでいて、どこか淡くて幻想的な画質。それこそ角川映画的な甘酸っぱい「青春映画」な雰囲気が全体に漂っている。
もちろんこの時点では、各登場人物の抱えている真相や内面は明らかにされていないけれども、そういう淡く滲んだ画の中で同調圧力や惨劇を描くことによって、「世間や学校が押し付ける『青春』なんてロクでもねぇ!」という皮肉と怒りの表明をしつつ、だけどやはりこれは「少年少女を主人公にした青春映画なんだ」という宣言をしているわけです。巧い!

そして、血みどろの本筋が走り出してからはもう、内藤監督の持ち味である「悪意」と「やだみ」描写の釣瓶打ち!
こういった映画を見慣れていない良識ある人ならば、妊婦を縛り付けていたぶる。という最初のゲームの時点で席を立ってしまうか、スクリーンに物を投げてしまうかもしれません。かくいう自分も、見てて結構キツかった。
しかしそれでも観るのをやめられないのは、内藤瑛亮監督作である以上、ラストに熱いカタルシスがあることを知っているから。
この布石は上に書いたオープニングシークエンスの直前、謎のファーストショットから始まるカウントダウンからして既に打たれている。

この世に生きる価値ある人間は、一人もいない

そう嘯いていた少年が、想像を絶する痛みの中で叫んだあの言葉によって、欺瞞と抑圧と陵辱に満ちたセカイに、最後のピースがはめられる。
そして、少女は解放される。満ち足りた彼女の姿は名状しがたいほど美しい。

本作におけるカウントダウンの帰結を肩すかしと感じる人もいるとは思う。
だけど、「現実」よりも怪奇と幻想の世界を愛し、スクリーンの向こうにある血みどろの世界とその惨劇に立ち向かう女性たちに魅せられ続けてきた人ならば、本作の美しさとカタルシスがわかるはず。
シアターN渋谷に通っていたような(自分含む)根暗なボンクラどもは必見だ!!

※追記
しかし本作、最後に「動物は虐待していません」とテロップが出るけど、生き餌のシーンはどう見ても……
欺瞞がもたらす抑圧を描いた映画でもあるから、皮肉で入れてんのかも。
個人的には、それが映画のために撮り下ろされたものならば、たとえ捕食・屠殺を映したものであっても、動物を殺すシーンは虐待だと思うし、好きにはなれません。まあ、映画への評価とは別ですけども。
関連記事
レビュー

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

プロフィール

クロサキ

Author:クロサキ
クロサキといいます。以前はmorganeと名乗っておりました。
なんてこたーない自堕落な日常を綴っています。
どうぞお気軽に閲覧、コメントなど。

Relief with water
Amazonでのマイストア。ご来店お待ちしております。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
レビュー
月別アーカイブ
FC2カウンター
つぶやき
リンク
検索フォーム
Amazon検索
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード