ふたつの名前を持つ少年


two name boy

ナチス政権下、自らの身分(名前)を隠して生き延びたユダヤ人の少年の物語。
原作は実話を基にした児童文学「走れ、走って逃げろ」(ウーリー・オルレブ作)。

制作されたこと自体がたいへん意義深い作品であることはもちろんとして、とても面白かったです。
ヨーロッパ系の子供映画って、わりとオフビートというか、淡々とした作りでもって、置かれている状況の苛烈さや子供の純真さを描き出すものが多い印象なのですが、今作はオンビート、万人が見やすいエンターテインメントを意識して作られていると思いました。
危機的でダイナミックな場面が連続するし、撮影にしても、長回しの多用や客観的な引きの画などもほとんどない。
一つ一つのシーンにおいても、物語上必要な部分が語られるとパッパッとカットが切り替わる。観客が眉を寄せるような難解なショットも無い。音楽も饒舌。
要は、ものすごく観やすいんですね。今作のような題材でこういった作りは一歩間違うと不謹慎になりかねないし、劇中主人公に差し伸べられる善意の数々は、当時の状況を考えると、これって奇跡の連続じゃないのか?とも思えるのですが、主演の少年(クレジットで気づいたけど、双子が演じている)をはじめとした俳優陣のリアリティ溢れる演技と、知恵と勇気を駆使するサバイバル描写、それに、傷口や動物の死体など、グロテスクな部分もきっちりと描いているため、絵空事には堕していない。

というか主人公を助ける夫人のキャラクターはどこまで実話を基にしているんだろうか? 
いや、あまりにも気高く美しいので……とはいえここも、現実的な対処法を教えてくれるシークエンスでもあるので、そこまで違和感はないのですが。

とにかく、個人的に何よりも賞賛したいのは、ロケーションの素晴らしさ!
ポーランドの四季折々を映し出す映像美にひたすらうっとり。特に森の美しさは特筆に値する。
風景(撮影)の美しさという点に関しては「ミツバチのささやき」「だれのものでもないチェレ」「明日の空の向こうに」など、ヨーロッパ圏子供映画の伝統を受け継いでいると言ってもいいでしょう。
室内シーンを含め、構図の取り方も全編抜群。絵画的な必殺ショットも多数。
あの美しい風景を見ることができただけでも、今作を観た甲斐がありました。ぜひ、実際に一度訪れてみたい。

そうそう、引きの画といえば、今作で映し出される美しい自然は、苛烈さを示すこともあるけれど、どちらかといえば主人公を見守っているような視点で撮られているように感じましたね。
これはモデルとなった方の当時の実感なのか。児童文学ゆえか。どちらにしろ、戦争を扱った映画ではちょっと珍しいかも。
(ちなみに、ラストシーンで現代のイスラエルが映されるんですが、砂漠の国だけあって、そのシークエンスだけ世界観が全然違うw)

しかしあれですね、今作、下半身ネタや立ちションシーンが異様に多いw
いや、物語上の必然性はちゃんと(割礼されているの知られるとユダヤ人であることがバレてしまうという切実な理由)あるので異様というのは不適当なんですけど、絵面の数々を思い返すとちょっと笑ってしまうw
とはいえそんなシーンが多いのにもかかわらず、子供の裸(下半身)が決定的に見えるシーンが無いあたりには時代を感じるな……って、これは考え過ぎか。
でも、最近はホドロフスキーでさえ子供にパンツ履かせてるしなぁ……まあ、モロに映しちゃって製品版にボカシ入れられるよりはマシか。

思い返すといえば、邦題も意味深いですね。
原題の「RUN BOY RUN」もしくは原作の邦題「走れ、走って逃げろ」をそのままは使えなかったということもあるでしょうけど、「二つの名前」を「持つ」というところに、主人公と父親が交わした約束と、ラストでのあの選択が込められている気がして。
ただ、自分は民族的アイデンティティの低い人間なので、あの結末、ドスンとはこなかったのが残念ではありますが。

ともあれそんなわけで、たいへんオススメです。原作も読んでみたい。
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