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ミツバチのささやき

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恥ずかしながらいまさら観ました。スペインの巨匠ビクトル・エリセ監督の代表作(といっても超寡作な人なんですけど・・・)。
映像の美しさのみならず、内容も示唆に富む、評判通りの素晴らしい傑作でした。
蜂蜜のようになめらかな黄金色に照らし出される屋敷内。焼き菓子のような大地。果てしない地平線。唯一無二の絵画的映像美にもう、ひたすらうっとり。
衛星劇場HDで視聴したので、フィルムやソフトと比べて差があるのかどうかはわかりませんが、陰影がかなりきつめで、それが美しい風景をより絵画的に浮かび上がらせていました。
音楽もとても良くて、オープニングの寂しげなテーマは映像と合わせてとにかく印象に残る。風の音も非常に効果的で、画面の前でいちいち悶えていましたw

主役のアナ・トレントはもちろん、イサベル・テリェリアも良い。
ぶっちゃけ顔はパッと見「アナと比べるとちょっとアレだな・・・」と思ってしまうのですが、顔の角度や表情によって驚くほど妖艶に見える。
演出や撮影、子役本人の演技力や資質、どれが最も大きく働いたのかはわかりませんが、大人の階段を登り始めている少女をこれ以上ないほどに表現しきっている。

お話としては、これも一種の物語論なのかな。と思いました。というかこの映画って相当後続の作品に影響を与えてるなぁ、と。
やっぱ一番最初に思い浮かんだのはデル・トロの『パンズ・ラビリンス』。舞台もお話もそっくり。
フランコ政権下の厳しい時代に生きる少女がおとぎ話に触れるという物語。どちらも傑作ですが。
それと同時にどちらの作品も、物語の本質という点ではフランコ政権下という時代背景はあまり問題ではないと感じました。
いやもちろん、スペイン出身のエリセ監督にとっては、作品と不可分の重要なモチーフであるだろうし、作中の舞台設定なしではあの映像美は生まれなかったでしょう。
しかし本作が物語として何を訴えようとしているのか。ということを考えた場合、フランコ政権およびスペイン内戦という時代背景が作中で果たしている機能というのは一種のマクガフィンでしかない。

『パンズ・ラビリンス』の主人公オフィーリアも年端の行かない少女でしたが、今作のアナはさらに若い。
村に巡業してきた映画館で『フランケンシュタイン』を観ても、なぜ彼が少女を殺したのか、そしてなぜ最後に彼が殺されたのか解らない。
争う国民を働き蜂に例え未来を不安視する父、今の家庭に生きる喜びを見い出せず内戦地に手紙を送り続ける母、映画も精霊も全て嘘であると既知している姉。
同じ時代、同じ場所に暮らしながら、アナは家族の誰とも違う世界に生きている。誰もが通り過ぎ、やがては決別を迫られる世界。
映画が進むにつれ、アナも決別のための試練を与えられる。彼女もまた「大人」になるのか。なってしまうのか・・・

しかしアナにはある奇跡が訪れる。それはあくまでアナにとっての奇跡でしかなかったのかもしれない。しかし彼女にはそれで充分だった。
ラストシーン。アナはあらゆる意味で生き延び、蜂の巣状の格子が施された窓の下、あるささやきを胸に夜空を見上げる・・・
魔法や超常現象やUMAがホントに存在すればいいのにな。と常日頃思っている管理人にしてみれば、こりゃなんとも羨ましいハッピーエンド!!

アナは自由になった。しかし自由であるがゆえに、これからの人生は困難に満ちているでしょう。
でもエリセ監督が戦争を経てこのような素晴らしい作品を世に送り出してくれたように、アナもまた素晴らしい芸術家に育ったことを祈っています。

時代背景はマクガフィンでしかないと上述してしまいましたが、それは今作の持つ優れた寓意性・・・どの時代どの境遇にも通用する普遍性を強調したかったからです。
・・・そしてそれでいて、寓話的物語にとどまっていないところがまたすごい。
今作を観て思い出したのが「すべての芸術は、道徳的、宗教的真実(あるいは誤り)の各要素が渾然と溶け合った状態で反映されていなければならない。」というトールキンの言葉でした。
そして「物語に命があるほど寓意的物語解釈を許してしまう」と。
それが真実かどうかはさておくとして、
(上記の言葉の端々に表れているように、トールキンは意識的・意図的に書かれた寓意物語を嫌っています。この思想に反発を覚える人もいるでしょう)
あらゆる視点での解釈を赦しながらもどこか捉えどころのない、把握しきれない手触り。親しみやすさの表面の内側に深淵を擁する世界に触れる体験。
そういった感覚を呼び起こしてくれる今作のような作品こそが、名作と称されるのでしょう。

とりあえずこの名作が日本国内で気軽に見れない環境であるというのは国の恥なので、早く国内盤DVDを再販するかレンタル用DVDを解禁してください。海外でも出てないから難しいだろうけど欲を言えばブルーレイで観たい。TSUTAYA発掘良品に期待!
あと、キネカ大森の開館30周年記念大感謝祭にて、4/5(土) ・4/14(月)・4/17(木)に今作のフィルム上映を行うそうです。
http://www.ttcg.jp/cineka_omori/comingsoon/
『霧の中の風景』と『サクリファイス』は未見なので絶対行きたいぞ。
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この記事へのコメント

- じた - 2014年04月06日 23:20:03

「ミツバチのささやき」懐かしい…もう一度見てみたくなりました。作中のどの場面も、すべてが絵画みたいで本当鮮烈な印象を持ったのを覚えています。アナ・トレントももちろんですが。そして「キネカ大森」でこんな素敵なことやっているのですね!情報、本当ありがとうございます。「霧の中の風景」を見に行きたいと思います。

- クロサキ - 2014年04月07日 02:48:12

本当に鮮烈な映像ですよね。
逆説的、というか変な言い方ですが、あまりに美しすぎて実写とは信じられないというか・・・撮る人が撮れば世界はこんな風にも切り取ることが可能なんだな、と。

自分も『霧の中の風景』は絶対に行きます!

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Author:クロサキ
クロサキといいます。以前はmorganeと名乗っておりました。
なんてこたーない自堕落な日常を綴っています。
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