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レビュー

サカサマのパテマ

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親方!地下から女の子が!

吉浦康裕監督による新作劇場アニメーション。
前作の『イヴの時間』が素晴らしい出来だったのと、ボーイミーツガールな内容ということで、前々から楽しみにしておりました。

ただ正直なところ感想としては、未完成品を見せられたというか、ダイジェスト感著しい出来栄えというか・・・鑑賞後もどかしい気持ちになってしまった作品でした。

以下、内容に触れています

良かったところは沢山ある・・・というか設定自体は、自分のツボを突きまくりなんですこの作品。
異なる文明で育った少年少女が出会い惹かれあうボーイミーツガールというだけでもうアレなんですが、逆さまの世界という、SF・ファンタジーならではのセンスオブワンダー溢れる設定もまた好みで。
世界観を形作るビジュアルもまたすごく良くて。
ボーイミーツガールという王道な主軸に違わず、脇のキャラクターやプロットも王道中の王道で。
そこに奇抜な設定やSF的なガジェットが絡んできて、主人公たちは幾多の苦難を乗り越え、最終的には落ち着くところに落ち着く。というウェルメイドな作りの物語。
こういった作風、嫌いな方もいらっしゃるでしょうが『天空の城ラピュタ』をオールタイムベストワンに掲げている自分のような人間にはもう大好物な要素ばっかりで、嫌いになれるはずがない作品・・・のハズなんですが、観終わったあとの感触としては前述の通り。

なんでそうなったのか、正直なところまだちょっと整理しきれていないのですが、一つ思うのはズバリ
王道をやるには全体的に描写や踏み込みが足りなかったんじゃないか

まず何より足りないと感じたのは、主人公であるパテマとエイジが惹かれ合っていく描写。
前述の通り設定は大好物だし、キャラデザも可愛いし、二人ともいい子だし魅力あるしでカップリング的な目線で見ても何ら文句は無いはずなんですが、観てていまいち乗り切れない。

出会いはいい。まず異なる世界に住んでいた二人が出会って、それによって新しいものを見る。

パテマと手を繋いだことによって空に浮かんだエイジが
「すっげぇ・・・飛んだ!」
と、感動しながら草原を駆けるところは、ボーイミーツガールとしてもセンスオブワンダーなSFとしても醍醐味溢れる名シーンで、その後に続く、アイガの抑圧された無機質な日常との対比も含めて素晴らしい。
(この部分は無料で配信されている動画でも見ることができます)

その後、今度はエイジがパテマに星を見せるシーンがあって、お互いに自分の世界の魅力を教え合って、交流と絆が生まれて・・・ここまではいい。

問題は、シーンとしてはそのすぐ後、エイジがパテマを無事に元の世界に返してあげると約束してしまうこと。

その約束から間を置かずに、追っ手に追われる二人。パテマが捕まる。無力な自身を突きつけられ失意に沈むエイジだが、当然結果的には奪い返しに行く。
そして奪い返すときには、既に二人は両思い的な境地に達している・・・

全体の流れとしてはいい。
プロットとして見れば問題はない。
あらすじとして聞く分にも違和感はない。
王道で上等です。無問題です。

そしてもちろん、上に書いたのは概要の概要に過ぎません。
エイジがパテマに大事な約束をするシークエンスの前に、二人がそこに至るまでの心理・それに足るだけの根拠が、作中できちんと提示されています。
それは、どちらも外の世界に憧れているということ。自らの住む世界で異端者であるということ。
それぞれの過去のエピソードが挿入されることで、なんとなくでも観客は解るようになっている。
望むものそれ自体は違っても、とても近しい二人の共通点。
アウトサイダー同士の惹かれ合い。これまた大好物ですよ!
今作はキャラの内面が描けていないわけじゃない。その心理と行動の裏付けも作中でされている。

・・・でも、

でも、そうじゃないんだよ!

それじゃあ足りないんだよ!!

二人の大事な約束をする前に、あのプレハブ(?)で二人の交流をもっと見せるべきでしょ!!!

エイジ、あの建物は何ていうの?
エイジ、学校ってどんなところなの?
エイジ、このパンとってもおいしい!私こんなの食べたことない!
エイジ、助けてくれてありがとう。私、エイジのこと・・・


みたいなやり取りしろよ!!!!!

いや、これはもっとイチャイチャしてよぉ!という個人的な願望だけでは決してなくてですね、要は物語が骨格だけで、肉付きが足りないと感じたわけです。ハイ。
肉が全く無いわけではないだけにもどかしい・・・!

これは、パテマとエイジだけでなく、他のキャラに関してもそう。
ポルタにしてもジイにしてもジャクにしてもカホにしてもイザムラにしてもそう。全体がそう。
それぞれのキャラに必要最低限の描写や背景の説明はあるけど、もうプラスワンがない。
エイジが男の決意でパテマを助けに行って、パテマが泣きながらエイジの助けを待っていたとしても燃えない。
物語上で筋が通っていても納得いかない。
展開に無理がなくても意味がない。

無礼を承知で『ラピュタ』を引き合いに出しますが。

パズーとシータがハトと戯れたり、坑道でタマゴとパンを分け合ったりしたときのような血の通った暖かい交流と生活感がない!
これじゃどんなにフラップターのエンジンがかかってもテンションが上がらないんだ!


今作のキャラクターの関係性や内面に関して、戸惑う観客はいないでしょう。解りやすく整理されてはいる。
でもそれは脚本や演出の力じゃなく、王道な設定の基にそれぞれ役割を振られ配置された、位置付けによる効果でしかない。
心の変遷は分かるけど、感じられない。
嫌な言い方をすると、王道によっかかりすぎ。足りない!浅い!

そんなだから、敵役であるイザムラの独裁も狂気も、ステレオタイプ過ぎて本当に薄っぺらく感じられて、はっきり言って悪役ぶりが見てて恥ずかしかった。
そのとばっちりか、土師孝也さんの演技も最悪に聞こえてしまう始末・・・ひたすら粘っこく悪どさと狂気を出そうとしてるだけの台詞回しが本当に耳障り。『楽しいムーミン一家』の署長さんと同じ役者とはとても思えなかった。

物語というか、プロット自体はホントに悪くないんです。
「サカサマ」という設定が、相手の立場になったときに初めてわかる気持ちのメタファーとして、ラストのオチで登場人物の立場と価値観がひっくり返るという伏線のファクターとしても機能していて、テーマ性もばっちり。
かゆいところに手が届いている作りなのに、なのに・・・
なんで肝心なとこだけおろそかなんだよ!

骨だけで肉がないから、キャラ同士の会話もなんだか全体的にぎこちないんだよなー。あーあ・・・

そんなこんなで、モヤモヤしながら劇場からの帰りに本屋でノベライズ版買ってみました。
そしたら、ちらっと流し読みしただけでも、自分が指摘した足りない部分、そのものズバリなシーンや会話がガッチリしっかり入っている!
パテマがパンの味に感動するところ、本編映像でも見たかったよ!!
ジャクとイザムラの心理描写や行動原理もちゃんと書き込んであるし・・・他にアレもコレも・・・
小説と映像とでは表現方法が違うのはわかるけど、もうちょっとなんとかならなかったのでしょうか、監督。
いや、なったはずだ!

それにドラマ部分だけでなく、世界観の見せ方ももどかしい。
特にエジン(地下世界)のシーンが少なすぎる!せっかくあんなに魅力的なビジュアルを構築して、しかも音楽に『サイレントヒル』の山岡晃さんまで起用してるのに、探索シーンがほとんどない!どうなってんだよおおぉぉ!?

・・・勝手な暴言ばっかり吐いてきましたが、題材としては本当に好みだし、キャラクターも魅力的ではあるので、やっぱり嫌いにはなれないんです。
パテマとエイジが手を繋いで空に浮かぶシーンはどれも本当に見てて楽しかったし微笑ましかったし、ポルタとエイジのくんづほぐれつのメタギアシークエンスには笑ったし・・・
でも本当に惜しいというか・・・あともうひと押しの演出や台詞の練り込み、もしくはシーンや描写を挿入するだけで、映画作品として傑作になると同時に、個人的にもオールタイムベスト級の作品になっていたと思うだけに本当に惜しいし、もどかしい。
是非ともDVD発売の折には、追加要素をバンバンくっつけてほしい。ディレクターズカットでも完全版でもいい。映画館で見た本編はなんだったんだっていうぐらい、あらゆる要素と描写を補完して内容を練り直して欲しい。
それか思い切って続編やるとか・・・物語的にはオチているので難しいとは思いますけども。
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レビュー ★★☆

この記事へのコメント

- 管理人 - 2013年12月08日 16:21:11

恥ずかしながら遅れに遅れて昨日見ました。そしてmorganeさんと全く同じ、いや、本当に全く同じ感想を得ました。名作になりえる要素が死ぬほどたくさん詰まってたのに、キャラの踏み込みの甘さのせいで本当にもったいなくなってしまった作品だと思います。2日間もやもやが止まりません。なんかもう、本当にもったいないです。

…ということをブログに書いてましたら、ラピュタとの比較も含めてほとんど同じような言及になってしまいましたすいませんwこの方の作品へのアティテュードは大好きなので、是非またこういう王道の「ボーイ・ミーツ・ア・ガール」SFにて、満足いくものを作って頂きたいものです…。

Re: タイトルなし - クロサキ - 2013年12月10日 20:46:14

自分も観てからずっともやもやが止まりませんでしたが、じたさんのレビューを読ませていただいて、少しスッキリしましたw 
いやもう、本当になんというか・・・最高の素材と、それらを料理できるはずの優れた技量を持っていながら、なんでこんな形で出来上がってしまったのかと。
「本当の駄作より名作になる要素を全部持っておきながら勿体ない作品を見させられる方が何倍もつらい」と書いてらっしゃいましたが、本当に本ッ当にそうだと思います。

次回作こそは。という期待はもちろんですが、ぶっちゃけその前に今作をソフト化の際に大幅に作り直して欲しいというのが本音です。
これもじたさんが書いてらっしゃいましたが、いろいろ補完しつつの120分位の尺になったら間違いなくブルーレイ買います。
まあそんな前例は(たぶん)ないので、まずありえないでしょうけども・・・ああ、やっぱりもどかしいです。

- じた - 2013年12月14日 21:14:37

すいません!間違って思いっきり名前を「管理人」で書き込んでました…恥ずかしい…orz

このままだとBlu-rayは買わないですねー…氏の作品はすべてそろえているのですこし残念なのですけど。キャラも、完全に魅力がないわけではなく、もう一歩踏み込むだけでものすごくよくなったと思うんです。ああ、もう。。もったいない…!!

と、いつまでも愚痴ってても仕方ないですが、とにかく次の作品に期待ですね。。

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Author:クロサキ
クロサキといいます。以前はmorganeと名乗っておりました。
なんてこたーない自堕落な日常を綴っています。
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