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おおかみこどもの雨と雪

『おおかみこどもの雨と雪』

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絶賛・好意的なレビューが数多い中、「普通」「何がいいのかわからない」という評判も聞いていて、『時をかける少女』にも『サマーウォーズ』にもイマイチノれなかった自分としては、おそらく後者寄りの感想を持つだろうな。と思っていました。
相変わらずメインキャラに非声優を起用しているところ、作風の方もポスターを見たただけでなんとなく予想がつく感じ・・・まぁつまり、周りが囃し立てている「ポストジブリ」「ポスト宮崎駿」というポジションに監督自ら迎合しているようで正直気に入らなかったわけです。
実力で考えるなら、原恵一さんや神山健司さん、今敏さんといった方々のほうがもっと一般的に認知されるべきだと思っていましたし。
というワケで「まぁ最低、ケモロリショタ萌えできればいいよね」という完全に下卑た&ナメきった姿勢で挑んだのですが

降参です。
完全白旗。

今まで、ツイッターや周りに、過去作への先入観だけで観もしないでグチグチ批判していた非礼・罵詈雑言、すべて詫びます。

これは紛れもなく『ぼくらのウォーゲーム!』を超える細田守監督の最高傑作にして、日本アニメーションの歴史に刻まれるべき大傑作です!!

※以下、ネタバレを含みます。 いやね、個人的に気に入らないところ、客観的に見ての欠点も、結構あるんですよ。
これは一緒に観た同僚とも終わった後に散々突っ込んだんですが、まず主人公、花の聖人君子っぷり。一応名前の由来で伏線というか作中での根拠らしきものがあるとはいえ、愛する人が突然いなくなって、その人との愛の結晶である子供たちを他の誰でもない自分が育てる!・・・までは、まぁいいんですが、その後に降りかかる困難・・・思った以上のリアリティで描写されて、そのこと自体には好感が持てるんですが、あの年齢であれだけのことが我が身に降りかかって、子供を怒鳴りつけない、先立った夫を恨まない。というのは、言葉は悪いけどはっきり言って「異常」だと思いました。もちろん疲れのあまりに憔悴しきった描写もあるにはあるのですが、作中で一回くらい茫然自失となるorキレるぐらいのところは見せたほうが良かったんじゃないかと思います。「おおかみおとこ」である旦那さんのわかり易いまでの人格者っぷりも相まって、ぶっちゃけ前半のこの辺はちょっと気持ち悪かった。韮崎の爺さんが花のその辺りに突っ込んで(「ヘラヘラ笑うな!」の辺りですね)、キャラ描写を掘り下げてくれるのかと思いきや、最終的には中途半端な役回りだったし。
それに、田舎の人間関係の描き方も自分としては大いに不満。
いわゆる「ムラ社会」・・・いやそもそも「人間関係」自体を敬遠しがちな、コミュ障丸出しな自分の、ごく個人的な思い込みや不信感を差し引いても、あの、まるで絵に描いたような「持ちつ持たれつ」の様、ちょっと極端に言うと「田舎の人は都会の人とは違ってみんな心が清くて優しい」「田舎万歳」「人と人とのつながり万歳!」的な描写の数々には、農業の厳しさと喜びをきちんと描いているところと物々交換のリアルさを除いて、少し呆れた。『サマーウォーズ』もその辺りがダメだったんだよなー。いや一応打ち解ける段階は踏んでるんだけどさ。そこも含めて綺麗すぎるというか・・・
それに、終盤。最終的に袂を分かつことになる雨君と雪ちゃんに関してですが、それぞれ別個のエピソードで対比・進行していたとは言え、お母さんが探しに行くだけで、最後に二人が絡まないのはちょっと寂しいというか、溝が残ったままのようで少し後味が悪かった。まぁ、あの争いの時点で、お互い住む(選んだ)世界の違いを悟っていたということなんでしょうが、個人的には一緒に送り出して欲しかったな。
後味が悪いといえば、草平君。彼のキャラ造形と雪ちゃんとのエピソードは大変素晴らしいのですが、彼の母親に関して、エピローグか何かで少しフォローが欲しかった。彼自身が「俺はいらなくなるんだってさ」とは言っていたけど、再婚して妊娠したからって、あのお母さんがそんなことを言うんだろうか?草平君の早とちりや誤解なんじゃないの?と思ってしまっていたので・・・

えー、とりあえず思いつくままに不満点を書き連ねましたが、本当に前半は個人的にはそんなにピンとこなかったんですよ。もちろん舞台が都会の時でも美術的・ドラマ的に見るべきところは多かったのですが(オープニングの花畑、大学の講堂と図書館、一人暮らしの部屋で恋人との幸せな生活などなど、経験のある人にはたまらないと思う)それ以上に花と狼男の人格者っぷり、聖人っぷりが鼻についてしょうがなくて・・・「奨学金で大学に入ってアルバイトしながら勉強頑張ってます」という最初のナレーションと、大学の前で狼男さんが子供を助け起こすところとか、綺麗を通り越してあざといあざとい!
それでいて、そんな二人がベッドインするシーンなんて、はっきり言うと半獣○なわけで。なんだか二人がこれ以上ないほどの人格者なだけに、背徳感でかなりドキドキしてました。まぁつまり違う意味でテンションあがってニヤニヤしてたとw
狼男が原因不明の死を迎えて、花が色々な理不尽に突き落とされた時には、さすがに身を乗り出してしまったけれど、それは登場人物の不幸を傍観する安易な感情移入でしかなかったと思う。
そうじゃなくなったのは、おそらく、雨と雪の成長が描かれだしてから。
幼い子供らしく、わがままで甘えん坊で、泣き喚き暴れまわり、全力で感情を訴える二人。
前述の通り「花、これでキレないなんてちょっとおかしいって」とは思いつつも、子供たちが本当に愛おしい。
三人はとうとう田舎に引っ越すことになるわけですが、マッドハウスだけあって、その自然の情景と描写は素晴らしいの一言。『サマーウォーズ』からもかなり進化している。でも『となりのトトロ』や『蟲師』といった、「これは一つの境地!」というほどには感じず、一目には「ああ、すごい綺麗だなー」と思うだけでした。
でも、泣いた。
ボロ屋(というかほとんど廃屋)を修繕する花、緑の中で駆け回る雪、新しい環境に怯える雨。そして食物を育てる三人。自然に囲まれた三人の生活がスクリーンに映し出されるだけで大号泣。
自分でもなぜか解らない。
ワケも分からずに涙してしまうラオウの気持ちがよく分かりましたよw
もうそこで、この作品に対して完全降伏。それからも三人の些細な動きや感情の揺れが描かれるたびに嗚咽をこらえる羽目になってしまいました。
恋を知る雪、自分の道を見つけた雨、子育てを通して二度目三度目の別れを経験する花が描かれるラストでも再び号泣。
なんでなんだろう。必死に自分に問いただしてみるんだけど、ただ泣けて泣けて仕方がない。
エンディングテーマとかもさぁ、解りやすいというか、やっぱりあざといんだよ。でも泣くしかない自分。いったいなんなのだろうかこれは。

観終わってからしばらく考えてみても、その答えはなかなか見つからなかった。この作品の何にそんなに揺さぶられたんだろう。
徐々に母として目覚めていく花?子供たちの健気な生き様とその分かれ道?
その疑問に対してのおそらくの正解をくれたのは、パンフレットに掲載されていた氷川竜介さんの評論でした。
以下、抜粋。
この映画の場合は、「人がおおかみに変身する」という設定その一点だけがファンタジーで、他に起きること描かれることはすべて「どこかで体験した/これから体験するかもしれない」と感じさせる「リアリティ」で固められている。その「実感」が13年という長大な時間経過とともに続いていく点で、「人生そのものを描いている」と言ってもいい。この「人生」とは「人のいとなみ」とその連なりのことでもある。
~中略~
暗い映画館でスクリーンの世界と空気感に埋没し、明るくなった後には自分と世界の関わりが刷新されたような開放感があるだろう。その後も何気ない風景や、身近な人の言葉や、一瞬の空白の時間までもが輝かしいものとしてリフレッシュされた気分を味わうかもしれない。そんな経験の総体が「生命力をあたえる」という本来的な意味での「アニメーションなのだ」。たとえどんなことがあったとしても、生き続けることそれ自体が奇跡―
~後略~
そう、そう、そうなんだよ!自分もまさに観終わってからその状態・・・「自分と世界の関わりが刷新されたような開放感」にあるんです。
(掲載されている文自体、非常に素晴らしいので、作品が気に入った方は是非お買い求めを。
公式サイトに掲載されている富野監督のコメントも素晴らしいです)

「狼男」または「狼子供」という、リアルに描こうとすればするほど、歪さが浮かび上がってきそうなファンタジー(もしくは萌え系)的な要素が、「子育て」というドラマを描くためのキーとして機能していて、物語やテーマに対してきちんと必然性があり・・・いやそんな枠組みを軽々と飛び越えて、作品と一体化し、観客の胸を揺さぶってくる。
人と人とのつながり、アウトサイダーとしての苦悩、すべてを「生きていくこと」として包み込んで「生きていていいんだ」と教えてくれる。
その描き方や目線は比較的パーソナルというか日常的なものだけど、これ以上ないほどに壮大で且つ雄大でもあって、『もののけ姫』で描かれたような壮絶さとはまた別の形だった。
こんなに優しく、でも確かな手応えで「生」を描くことができるなんて・・・

散々、花の聖人っぷりを批判しておいてなんですが、「思春期の入口」や「自分で自分の道を選び取ること」など「親では直接教えられないこと」をきちんと描いているのも、非常に誠実な姿勢。
キャスト陣も概ね違和感はなかった。これも観る前は散々批判していたんですが。最初のほうこそ、距離感無視の芝居が目に付いたし(大学の階段のところですね)、大沢たかおはどうなんだろうという思いは正直未だにある。厳しい環境と安いギャラで懸命にキャラクターに命を吹き込んでいる本職声優の方々にチャンスを与える為にも、劇場アニメでプロの人を起用して欲しいという思いも変わらない。けど、一番大事なのはキャラクターに命が吹き込まれているかどうか、作品として成立しているかどうか。そう言った意味で、宮崎あおいをはじめとして家族三人を演じた方々は特に文句なしに素晴らしかった。

『時をかける少女』以降、細田作品の脚本を執筆している奥寺佐渡子さんが手がけた昨年の傑作『八日目の蝉』では、社会の規範や枠組みに囚われない「愛情」の素晴らしき円環構造を描き示していたけど、今作では「生きること」そのものの円環を、アニメーションにしか成し得ない躍動と情景で描き切ってしまっている。
なびく緑、流れる水、移り変わる季節と雄大な空気、雨と雪。そして花・・・

これを前にしては、上述した欠点など、重箱の隅つつきでしかない。
少なくとも自分はもう、この映画の悪口は言いません。
この作品を作り上げてくださった細田守監督、スタッフの皆さんに最大級の感謝を。
人生の宝物がまたひとつ増えました。


雪を駆け 雲を数え 雨に遊び 風に吹かれて
花に埋もれ 草笛鳴らそう 四本足で 二本の足で

新しい朝 
新しい虹
世界は不思議に満ちている
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この記事へのコメント

- ノラネコ - 2012年08月07日 00:25:14

はい、大傑作です。
「時かけ」「サマーウォーズ」は良く出来たジャンルムービーでした。
しかしこれは全く似た作品のない唯一無二の作家映画。
欠点、と言える物も見えるのですが、作家映画においてはそれもまた表現の一部。
文句なし、私的日本アニメ史上No.1作品です。

Re: タイトルなし - morgane - 2012年08月20日 17:21:32

ノラネコさん、返事が遅れてしまい申し訳ありません。
本当におっしゃる通りだと思います。彼以外には撮れない作品ですよね。
宮崎監督の『もののけ姫』を見て以来、
「「生」をテーマに据えて物語を描くのであれば、ストーリー面でも視覚的な面でも陰惨で苛烈な表現は避けられない」といった固定観念が自分の中にあったのですが、今作で打ち砕かれました。シビアな箇所も取り上げつつ、視点はとても雄大で優しい。それでいてしっかりと描けている。
『ラピュタ』という自分の中の金字塔があるので、私的No.1ではありませんが、今まで観てきた劇場アニメでは間違いなく五指に入ります。大切にしたい作品です。

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ノラネコの呑んで観るシネマ - 2012年08月07日 00:21

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クロサキといいます。以前はmorganeと名乗っておりました。
なんてこたーない自堕落な日常を綴っています。
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