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『八日目の蟬』

『八日目の蟬』 

今年は昨年に比べ、全く映画を観に行けてないですが、観た作品にハズレはほとんどなく、それなりに満足しております。
その中で、個人的に「心に響いた作品」。クオリティどうこうではなく「自分が大事にしたい作品」を並べると『メアリー&マックス』『星を追う子ども』そしてこの『八日目の蟬』になります。

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(2011/10/28)
井上真央、永作博美 他

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「日本映画史に刻まれる2011年度最高傑作」
と、思わず心配したくなるキャッチコピーがついておりますが、決して、偽りでも過剰広告でもない、本当に素晴らしい日本映画でした。

個人的にどれくらい感動したのかというとレンタルDVDで鑑賞した当日にブルーレイを買いに走ったくらいです。
ていうか公開当時、グダグダ躊躇わずに劇場行っときゃ良かった・・・

以下、ネタバレしています・・・が、
この作品はストーリー上でものすごいオチが待っているとか、そういう映画ではないと思うので、後半の総括部分以外は、鑑賞前に読んでも問題ないと思います・・・が、万一のことがあってはいけないので、やはり一度映画を観てから読むのをオススメいたします。
あらすじ:
不実な男(秋山丈博 /田中哲司)を愛し、その子供を身ごもるが堕胎し、二度と子供の埋めない身体となってしまった女、野々宮希和子。母となることが叶わない絶望の中、同時期に男の妻(秋山恵津子 /森口瑤子)が女の子を出産したことを知る。
「赤ん坊をせめて一目見て、それからすべて忘れよう」

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しかし、夫婦の留守宅に忍び込み、ベビーベッドで泣いている赤ん坊を見た瞬間、希和子は思わず子供を抱えて家を飛び出していた。 刹那的な逃亡を繰り返し、絶望と幸福感の中で疑似親子となった二人。しかし逃亡生活は、4年で終止符を打つ。
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……優しい母親だと思っていた人は、誘拐犯だった。4歳の少女の、血のつながった両親との普通の生活はこの事件によって一変する。誰にも心を許せず、両親とわだかまりを抱いたまま大学生になった秋山恵理菜(井上真央)の前に、自分を取材したいという女性ジャーナリスト、千草(小池栄子)が現れる。最初は相手にしなかったが、ある事をきっかけに、彼女との不思議な絆を気づいていく。
そんな中で、ある日、自分が妊娠していることに気づく恵理菜。相手は、希和子と同じように、家庭を持つ男(岸田/劇団ひとり)だった。自分の過去と向き合うために、希和子の逃亡生活を辿る旅に出る恵理菜と千草。
彼女の逃亡生活最後の地、小豆島を訪れた二人を待っていたものとは・・・

(ここまでのあらすじ部分はgooサイト様を参考にさせていただきました。)
八日目の蝉 - goo 映画

タイトルである「八日目の蟬」とは一体どういう意味なのか。

セミは、生まれてから最初の脱皮を終えると、幼虫として地中で数年間過ごし、成虫として地上に出た後はわずか七日で息絶える。
(人間にとっては)ショッキングな生態として、子供の頃に誰かから聞いたことのある人、印象に残っている人も多いのではないでしょうか。
もちろん、すべてのセミが七日ピッタリに死んでしまうわけではないので、厳密にいえば通説というより俗説というべきなのかもしれませんが・・・まぁ、それはともかく。

劇中に何度かある、恵理菜と千草が会話するシーンで、二度、この話が言及される。
一度目は公園で、
「セミってさ、地上に出てから七日で死ぬなんてあんまりだよね」と言う千草に対し、
「みんな七日で死んじゃうんだとしたら、寂しくない。別にみんなおんなじだし。でも、もし八日目のセミがいたとしたら、仲間がみんな死んじゃったのに、自分だけ生き残ちゃって、そのほうが寂しいし、可哀想だよ」と、恵理菜は言う。

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つまり、八日目の蝉とは、他の仲間とは一緒に死ねず、生き残ってしまった孤独な存在のこと。
人間に置き換えるならば、何らかの理由で世間から逸脱してしまった者を指している。
これは劇中で言えば、恵理菜と希和子、千草はもちろん、ほぼ全ての登場人物に当て嵌る。
あるいは、すべての人間に当てはまると言ってしまっていいのかもしれない。人間誰しも、多かれ少なかれ、空虚や孤独を抱えているのだから。

二度目は映画の後半、希和子と恵理菜にとって束の間の楽園であった小豆島で、千草が恵理菜に言う。
「八日目のセミはさ、ほかのセミには見られなかった何かが見られるんだよ。それってさ、すごく綺麗なものかもしれないよね」
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(今年の最優秀助演女優賞は、小池栄子で決まりでしょ)

当ブログとリンクさせていただいているノラネコの呑んで観るシネマのノラネコさんが書いてらっしゃるように、原作を映画的に再解釈した脚本が素晴らしい。
原作では、希和子の逃避行と、成長後の恵理菜の物語は、章構成できっちりと分けられており、それぞれ別のパートとして、小説らしい書き込みで丹念に心情描写がされている。
ところが映画版では、二人のエピソードを交互に描く構成になっている。一歩間違えばせっかくの優れた原作が台無しになってしまうところだが、原作からの的確な抽出とカットにより、原作を読んだ人にも安心して観れる出来になっている。いや、それだけではなく、二人のエピソードがシンクロすることにより、ひとつひとつの台詞や場面・・・画面から感じられる情感が増しているので、映画的な見せ場や醍醐味を味わうことができる。

原作では、希和子が赤ん坊である恵理菜を連れ出すまでのシークエンスが0章とされ、そこから物語が始まるが、映画版では、裁判の場面・・・恵津子と希和子の供述シーンが冒頭となっている。
劇中では供述だが、映画としては二人の女優のモノローグとして捉えても良いかもしれない。
森口瑤子、永作博美・・・二人の女優の鬼気迫るモノローグによって、観客は映画開始一秒で物語に引き込まれるはずだ。
裁判の場面は原作にもあるが、その中では二章で少し描写されている程度。しかしこれを冒頭にもってくることで、こんなにもショッキングな場面になるのだから、驚き。

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小豆島の美しい風景に関しても、撮影はもちろんだけど、脚本の効果によるところが大きい。
映画は小説と違い、登場人物の心情を直接書き込むことはできないが、演出、役者の演技、物語の流れによって、画面に映る「画」として、そこにあらゆるものを滲ませることができる。
小説では、希和子のその時々の心の有り様を、文字として丹念に書き込むことで、島の風景を単に「きれい」なもの以上に描写していた。
それに対して映画では、二人のエピソードをシンクロさせることで、画面に映し出される島の風景を、希和子と薫の唯一無二の大切な思い出の象徴として、観客の目と心に刻み付けることに成功している。
ああ・・・これぞ映画といわずとしてなんと言おう。

そう、今作の素晴らしいところは「小説原作の良く出来た映画化」などではなく、一つの「映画」として成立しているところだ。
(詳しくは書かないけれど、恵理菜と千草が小豆島の写真館を訪れる、映画オリジナルのエピソードとその演出は、鳥肌が立つほど素晴らしい。)

今作は、構成だけを見たり、物語だけを追っていっても、ストーリーとしては十分センセーショナルだし、面白い。
しかしそれだけだと「過去に傷を抱えた女の子が、苦しんでいたけど、旅をして、いろいろ人に出会い、いろいろな経験をして過去を受け入れて前に進むことができました。めでたしめでたし・・・・」といった、身も蓋もないロードムービー&人間賛歌で終わってしまう。
原作小説も映画も、もちろんそうなってはいない。

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二人のエピソードがシンクロすることによって表現され、蓄積されてきた情感は、前述の「八日目の蝉」に対する千草の解釈と合わさることで、映画的なカタルシスとして、ラストで爆発する。


(以下、総括に移りますので、未鑑賞の方は絶対に読まないように!)

希和子は、法的にも世間的にも疑いようのない犯罪者であり、その嘘によって周りの人たちを傷つけた。
けれど、映画のラスト、恵理菜がすべての感情を解き放つあの言葉
「世界で一番好きだって、何度も言うよ」
この台詞は、希和子が薫(恵理菜)に、母親として真実の、ピュアな愛情を注いでいたということ、そしてその愛情が、しっかりと恵理菜に受け継がれていることの証左だ。
これから恵理菜が歩いていく道は、けっして楽なものではないだろう。
しかし希和子から受け継がれた愛情は、恵理菜の中で既に母性として目覚めている。
それはきっと、お腹の中の子供に、たくさんたくさん、愛情として注がれる。
そして恵理菜とその子供によって、千草にも、そして、事件によって傷ついた恵津子と丈博にも、きっと、たくさんの愛が与えられる。

母性と、その愛情の巡りがもたらす癒やしを描いたこのクライマックスは、原作小説にはない、圧倒的な映画的カタルシスを観客に体感させる。

そこには「人生楽ありゃ苦もあるさ」「人生はいろいろあるけど、でも最高!!!!」「( ;∀;)イイハナシダナー」といった、凡百の人間賛歌の物語に対する薄っぺらい評論や感想などが介在する余地はない。

映画『八日目の蟬』は、社会や環境といった状況の枠にとらわれることのない愛情の尊さと深さを描いた、真の人間賛歌の物語であり、紛れもない傑作である。
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クロサキ

Author:クロサキ
クロサキといいます。以前はmorganeと名乗っておりました。
なんてこたーない自堕落な日常を綴っています。
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