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レビュー
クロサキ : デル・トロがアカデミー賞にて監督賞・作品賞をダブル受賞!めでたい!!
ペータくん :この勢いに乗って『狂気の山脈にて』の企画が再スタートするといいですね。 クロサキ : プラス、『ヘル・ボーイ3』にもワンチャンがあれば最高なんだけど。
ペータくん : しかし『スリー・ビルボード』が作品賞のみならず、脚本賞も逃してしまうとは…… クロサキ : 個人的にはどちらも大好きな作品だから、ちょっと気の毒だった。脚本賞は獲るべきだったと思う。
ペータくん : 良くも悪くもあざといところが敬遠されたのでしょうか? クロサキ : 『ゲット・アウト』は確かに素晴らしい作品だけど、あの作品のフレッシュさって、演出と演技のおかげだと思うんだよね。とはいえ、ホラーファンとしては嬉しい結果ではあるけども。
ペータくん :『シェイプ・オブ・ウォーター』へのモヤモヤはまだ残ってるんですか? クロサキ : だいぶ薄らいだかな。あの猫たちは「飼われていた」というより「居ついていた」と考えれば、ジャイルズの反応もまあ許容範囲かなと。しかし、俺が言うのもなんだけど、みんな猫のことは心配するのに、あの守衛さんには言及しないよね(笑)
ペータくん : 気の毒でしたが、良くも悪くもとばっちりで、イライザ達との関係性は薄かったですからね。物語においても現実においても、人間の生物への思い入れなんてそんなものじゃないんでしょうか。 クロサキ : 一言だけだけど台詞で補完もあるしね。気の毒と言えば、最後のスピーチ、J・マイルズ・デイルがかわいそうだった。
ペータくん : 『シェイプ・オブ・ウォーター』のプロデューサーですね。 クロサキ : ああいうの、他人事と思えない。
ペータくん : 日本人では辻一弘さんが受賞。これもめでたいですね。 クロサキ : レッドカーペットでの朴訥な喋りが良かった。まさに職人さんて感じ。とはいえ、チャーチル役にゲイリー・オールドマンをキャスティングした人がそもそも凄いと思う。色んな意味で。だって全然似てないじゃん!
ペータくん : 今年のノミネート作はバラエティに富んでいる印象。 クロサキ : どの作品も面白そうだしね。『ダンケルク』はつまんなかったけど。
ペータくん : 監督の意図がこれ以上ないほど実現されている(ように見える)。という点では、ノーランの最高傑作だとも感じましたけどね。 クロサキ : まあ、それは別の機会に。
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レビュー

原題:The Shape of Water
製作年:2017年
製作国:アメリカ
配給:20世紀フォックス映画
上映時間:124分
映倫区分:R15+
監督:ギレルモ・デル・トロ
製作:ギレルモ・デル・トロ、J・マイルズ・デイル
原案:ギレルモ・デル・トロ
脚本:ギレルモ・デル・トロ、バネッサ・テイラー
撮影:ダン・ローストセン
美術:ポール・オースタベリー
衣装:ルイス・セケイラ
編集:シドニー・ウォリンスキー
音楽:アレクサンドル・デスプラ
視覚効果監修:デニス・ベラルディ
出演:
イライザ / サリー・ホーキンス
半魚人 / ダグ・ジョーンズ
ジャイルズ / リチャード・ジェンキンス
ゼルダ / オクタヴィア・スペンサー
ホフステトラー博士 / マイケル・スタールバーグ
ストリックランド / マイケル・シャノン
あらすじ:
1962年、冷戦下のアメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働く女性イライザは、研究所内に密かに運び込まれた不思議な生き物を目撃する。イライザはアマゾンで神のように崇拝されていたという“彼”にすっかり心を奪われ、こっそり会いに行くように。幼少期のトラウマで声が出せないイライザだったが、“彼”とのコミュニケーションに言葉は不要で、2人は少しずつ心を通わせていく。そんな矢先、イライザは“彼”が実験の犠牲になることを知る。(以上、
映画.comより)
(※以下、ネタバレに配慮していません!)
クロサキ : 今年一番の期待作、観てきたよ。
ペータくん : ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』。ヴェネチアで金獅子賞、アカデミー賞でも最多13部門にノミネートされています。デルトロ監督自身も「一番好きだ」と語っていますから、自他共に認める最高傑作と言っていいでしょうね。で、どうでした?
クロサキ : 期待通りの素晴らしい映画だったよ……
ペータくん : その割には、なんか微妙にテンション低くないですか?
クロサキ : いや、本当に素晴らしかったんだけど、一点だけ、どうしてもモヤモヤしてしまう箇所があって……
ペータくん : というと?
クロサキ : 猫が食い殺されてしまうところ。
ペータくん : あなたホントに、(人間以外の)動物が殺される描写、苦手ですよね。
クロサキ : だからウェス・アンダーソン映画って観る気が起きないんだよなぁ……まあ今回それはいいとして。
正確に言うと、猫が殺されてしまった後の、登場人物のリアクションにモヤモヤしてしまったんだよね。
ペータくん : 飼い主のジャイルズは「本能だから仕方がない」と言ってましたね。
クロサキ : それはその通りだと思うよ。だから、猫を食い殺したからって『彼』を嫌いになったりはしない。観客としての俺はね。でもさ、ジャイルズにとってみれば、あの猫は同居人で家族だったんじゃないの? どれくらいの年数を共にしたかわからないけどさ。
ペータくん : でも、そこに至るまでのシーンを観る限り、ジャイルズやイライザがことさら猫を可愛がっている描写は無かったですよね。それぐらいドライな関係ってことだったんじゃないですか?
クロサキ : それは確かにね。あの猫たちを飼っているのは「可愛いから」という理由じゃなくて、自身の孤独な身の上を癒すためだったのかも。
ペータくん : 猫という奔放な動物を飼うことによって。
クロサキ : もしくは捨て猫で、行き場の無い者同士だったのかも。でも思うんだけど、あのシーンの意図って『彼』の非人間性を示すためのものなんじゃないの?だったら、ジャイルズと『彼』の間にある程度の距離が生まれた方が、作劇としても適当だと思うんだよね。「そいつを追い出せとは言わない。でも、この部屋には入れないでくれ」みたいな感じで。
ペータくん :じゃあ、ジャイルズと『彼』は和解しない方向で?
クロサキ : いや「猫のことは許せないけれども、イライザと髪の毛に免じて、『彼』の前途には祝福を祈る」みたいな流れにする。もしくは「涙ながらに責めようとするんだけども『彼』に悪意が無いことはわかっているから、責められない」。自分の理想的なバランスとしてはこんな感じ。
ペータくん :要は、割り切りが早過ぎるんじゃないか?ってことですか。でも、殺害現場のあと狼狽はしてましたよ。口外無用の秘密、それも同居人の大切な人が出て行くのを目の前にして追うことができなかった。
クロサキ : まあね。でもあれは自分も物理的に傷つけられたことが大きかったんじゃない? ペータくん : 大小の差は解りませんが、ジャイルズの傷が治るシーンがないと、ラストへの伏線が一つ消えちゃいますよ。
クロサキ : あ、そっか。うーん……よくできてはいるんだよなぁ。やっぱり。それと「本能だから仕方がない」っていうあの台詞。あれはジャイルズの、自分自身のセクシャリティに対してのものでもあるよね。
ペータくん :だからあれは必要なシーンなんですよ。
クロサキ :それは分かってるんだけどさぁ……でもやっぱりモヤモヤしてしまうんだよな。他生物の命を軽視しているような気がして。
ペータくん : そもそも、人間と同等の扱いを迫るべきではない気もしますが。
クロサキ : 我ながらメンドくさいけど、しょうがない。でもデルトロ自身は猫好きだと思うよ。ヘルボーイに猫好き設定を加えてたぐらいだから。あと、重ねて言うけど、映画自体は本当に素晴らしかった! ……まあ、だからこそ、その一点が気になっちゃうんだけども。
ペータくん : 他は文句なしですか?
クロサキ :うん、ほぼ。展開がやや強引というか唐突じゃないか?とか、『彼』がいる部屋に監視カメラついてないのはおかしくない?とか、通常の劇映画として観ると欠点になりかねないところもあるとは思うけど。
ペータくん : それらは欠点ではない?
クロサキ :うん。まあ別にその辺りを指摘する人を「無粋だ」と言うつもりないけど、個人的には減点ポイントにはならなかった。「映像で見せる」ことを徹底している演技や美術が素晴らしかったし、なにより今作は「御伽噺」だから。
ペータくん : でも、生々しい描写も多いですよね。
クロサキ : マイノリティが重要なモチーフだからね。本当の意味での「ありのまま」がテーマでもある。だから中年女性のイライザは自慰をするし、半魚人は飼い猫を食べる。
ペータくん : ゲイ、黒人女性、祖国に見放されたスパイ……監督の言う「The Others(非主流たち)」ですね。
クロサキ :デルトロ自身もメキシコ人だから、アメリカではマイノリティ。それでいて、彼ら味方サイドにしても、一面的な描き方をしていないあたりが、本当に信用できるなと。
ペータくん : 「被害者」だからといって、聖人君子なわけではないと。
クロサキ : もちろん、善人ではある。でもイライザなんか、良くも悪くも相当たくましい人だと思うよ。二人の最高のシチュエーションを作り出すために階下の映画館を雨漏りさせたりとか。ジャイルズへの懇願もかなり押しの強いものだったし。
ペータくん : 「恋は盲目」ってヤツですか。
クロサキ :ロマンチストとエゴイストは裏表。この映画はそれをちゃんと描いていると思う。デルトロの描くファンタジーは常にリアルとの相克。今作が「最高傑作」と称されているのは、その相克が生み出す味わいやカタルシスが、今までで一番高い純度でスパークしているからじゃないかな。
怪奇と幻想と現実(時代性)が融合した圧巻の美術、全編に塗り込められた豊かな寓意性と含意、滑らかな話運び、たゆたうようなカメラワーク、魅力的な登場人物を体現した役者陣(特にサリー・ホーキンスは本当に素晴らしい)、そして、登場人物の「声」を代弁する味わい深い音楽……すべてが本当に美しい。
ただ、作中の含意、および現代に通じる寓意性を読み取るにはある程度のリテラシーが要求される。それでいて、そういった生々しい「リアル」な描写や出来事を御伽噺として包み込んでいる物語構造になっているから、困惑する人もいると思う。「どういうリアリティラインで見ればいいんだ」って。デル・トロの言うように、今作はまさに「大人のための御伽噺」なんだよね。
あ、あと、ストリックランドへの手話ファックが最高だった(笑)。大きい声じゃ言えないけど、アレ、練習してます。
ペータくん : ストリックランドは悪の役回りを背負ってます。
クロサキ : 彼の家庭を見ると解るけど、彼の暮らしって、あの時代の、正に「アメリカン・ドリーム」なんだよね。彼の邪悪さは彼個人のものというより、アメリカという国の病理からきているものだと思う。あとは冷戦下における軍のマチズモ。
ペータくん : 彼も抑圧されている側であると。
クロサキ : とはいえ、マイケル・シャノンを一種の「怪物」として描いていることも確か。デルトロ、『フランケンシュタイン』も撮るつもりらしいけど、マイケル・シャノンに怪物をやらせる気なんじゃないのかな。ところどころボリス・カーロフに見えたのは俺だけじゃあるまい。
ペータくん : ということは、ホエール版のリメイク?
クロサキ : わからないけどね。でも個人的には、原作に忠実なものを作ってほしい。ホエール版はもちろん名作だけど、原作の持つ味わいや魅力を捉えた映像作品を観てみたい。かなり難しいと思うけど、デルトロ以上の適任者はいないと思う。
ペータくん : 今作、今のところ今年ベストワンですか?
クロサキ : うーん……動物へのフェア視点。という面では『RAW』に軍配が上がるかな……視覚的な情報量の多い映画だし、もう一回観たら感想も変わるかもしれないけど。あと、良くも悪くも「濃い」作品だから、人によっては「クドい」「甘ったるい」と感じてしまうかもね。
ペータくん : 歯切れが悪いですね。
クロサキ : 絶賛したい気持ち大きいからこそ、モヤモヤも大きくなってしまうというか……個人的な評価はちょっと保留で。
ペータくん : おいおい。
レビュー
★★★★☆

原題:Grave
製作年:2016年
製作国:フランス・ベルギー合作
配給:パルコ
上映時間:98分
映倫区分:R15+
監督:ジュリア・デュクルノー
製作:ジャン・デ・フォレ、ジュリー・ガイエ、ナディア・トリンチェフ、ジャン=イブ・ルバン、カッサンドル・ワルノー
脚本:ジュリア・デュクルノー
撮影:ルーベン・インペンス
美術:ローリー・コールソン
衣装:エリーズ・アンション
編集:ジャン=クリストフ・ブージィ
音楽:ジム・ウィリアムズ
出演:
ジュスティーヌ / ガランス・マリリエール
アレックス / エラ・ルンプフ
アドリアン / ラバ・ナイト・ウフェラ
ジュスティーヌの父 / ローラン・リュカ
ジュスティーヌの母 / ジョアンナ・プレイス
あらすじ:
16歳の少女ジュスティーヌは、両親・姉と同じ獣医大学へ入学。出迎えに来てくれるはずの姉は来ず、ルームメイトは男、しかも新入生にはいじめスレスレの過激な歓迎会が待ち受けていた。戸惑うジュスティーヌだったが、姉のアレックスを見つけ、なんとか学校生活を乗り切ろうとする。しかし、ジュスティーヌにとって最大の難関は翌日にあった。新入生たちは試練としてウサギの生の腎臓を食べさせられることになっていたのだ。ベジタリアンとして育ってきたジュスティーヌはそれを拒否し、上級生である姉に助けを求めるが、他でもない姉の手によって無理矢理口に入れられてしまう。吐き気を催し、その夜には蕁麻疹に悶えるジュスティーヌだったが、同時に、自分の中に変化も感じ取る。「肉を食べたい……」肉の味に目覚めたジュスティーヌの欲望は、次第に学園を騒がすほどにエスカレートしていく……(スタッフ・キャスト情報は
映画.comより)
(※以下、ネタバレに配慮していません)クロサキ : これは素晴らしかった……今年のベスト候補!
ペータくん : トロント映画祭で、しかもホラー好きの強者が集まる深夜上映で失神者や途中退席者が出たといういわくつきの映画ですね。 クロサキ : いっぽうで、カンヌ映画祭では5分間にも及ぶスタンディングオベーションが沸き起こり、国際批評家連盟賞を受賞。
ペータくん : ショッキングでかつ「映画作品」としても相当高く評価されていると。 クロサキ : しかも食人映画だっていうんだから、行かない理由がない。
ペータくん : 映画評論家の町山智浩さんも昨年のベストテンに入れてましたね。 クロサキ : それらの前評判を全く裏切らない傑作だった! しかもこの監督、これが長編デビュー作だっていうんだから、とんでもない新人が現れたもんだよ。
ペータくん : ジュリア・デュクルノーさん、現在34歳。
クロサキ : 美人なうえにめっちゃカッコイイ。女性監督っていうと文系女子みたいなイメージがあったけど、デュクルノー監督はイケイケ系だね。
ペータくん : (イケイケって……)キャスリン・ビグローとはまた違った魅力がありますね。 クロサキ : いきなり本題というか最初に言っちゃうけど、今作におけるカニバリズムをはじめとしたショッキングな描写の数々は、少女の成長を比喩的に表現したもの。つまりこれって、とても普遍的な物語なんだよね。カンヌで評価されたのもそういった部分でだと思う。
ペータくん : 映像の美しさもあるでしょう。 クロサキ : 現代アートっぽいスタイリッシュな映像。本来ならそこまで好みなタイプの映像ではないんだけど、この映画の場合、登場人物の内面を表現するための誇張でもあるから、表現主義の原則に則っている。そこが凄く良かった。
ペータくん : 同じようなアプローチで他の監督が作っていたら、空回った映画になってたかもしれないですね。 クロサキ : この映画は生々しくないといけないからね。さっき「作中の描写は比喩的なもので映像は表現主義的に誇張されている」と言ったけど、じゃあ「戯画的、諷刺的な映画なのである」かっていうと、そういうわけでもない。直接的なグロこそ抑制されているけど、食人は食人として、そのままに描かれているから。直球のドラマ作品のようでもあり、直球のホラー映画のようでもある。思わず声が出そうになるショッキングなシーンがいくつもあって、自分みたいなジャンル映画好きのファンも満足できる作りなのが素晴らしい。しかも、シーンによっては笑っちゃう箇所も多い。
ペータくん : ホラーでもあり青春ドラマでもあり、ときどきコメディでもある。そういったジャンルレスな作りが、オリジナリティと、全体の生々しさを生み出していると。クロサキ : 気取った言い回しになっちゃうけど人生における出来事や感動ってジャンルレスだからね。いずれにせよ、「生々しさ」はこの映画に欠かせない要素。「生」と「性」についての物語だから。
ペータくん : 画面に映っている具体的なものも、そこから連想され暗示されるイメージも、どちらも重要。そういう意味では「メタファー」っていうより「アレゴリー」と称するべきかもしれませんね。クロサキ : 俺、いまだにその二つの区別がつかない(笑)
ペータくん : ざっくり言ってしまうと、非常に複合的な映画なんですよね。ケレン味に溢れている一方で、普遍的かつリアルでもある。 クロサキ : でもテーマや美意識に一本筋が通っているから安っぽさや陳腐さがない。でも、そういう題材とか構造だけじゃなくて、この映画、物語の運び方もショッキングで凄いよ。
ペータくん : 目を疑うような展開が続きますよね。 クロサキ : 観ている間、「こ、これって夢オチだよね……?」と何回思ったことか(笑)リーダビリティっていうのかな。興味の持続っていう点でも目が離せない。
ペータくん : 手法が過激だから嫌でも目を引くってことを差し引いても、脚本が上手いですね。サプライズが続きつつも破綻していない。それとミステリー的な仕掛けもあって、ラストではビックリさせてくれる。 クロサキ : あの切れ味の良いラスト!タイトルの出し方も色彩も素晴らしくて、身体に電撃が走ったよ! ああいう瞬間のために映画を観ているといっても過言じゃない。
ペータくん : しかも、単純な「かまし」やビックリ芸ではないんですよね。この映画が何を描こうとしてきたのか、何についての物語なのかが浮かび上がる瞬間になっている。 クロサキ : 衝撃的かつ抒情的にね。他に言及しておきたいのが、動物の描き方。
ペータくん : 医療用に飼われている動物たちですね。直接的なバイオレンスこそないですが、観ていてすごく気まずい。 クロサキ : 生殺与奪を握られている生物の痛ましさというのかな。馬を眠らせて運び出すところとか、目を背けたくなるような生々しさがある。前に観た映画『いのちの食べ方』を思い出した。食糧生産の実態を映したドキュメンタリーで、去勢や屠殺の瞬間をハッキリと見せる。工場だから完全にオートメーション化されていて、カメラワークもフィックスだから露悪的な要素は一つもないはずなんだけど、それでも観ているときはすごく気まずい。で、果物とか野菜のパートになると途端にホッとする(笑)
ペータくん : 食糧用、医療用、手段と目的がハッキリしていて、なおかつその工程が機械化されていても、扱っている対象は命である。ということを突き付けられますね。命を一種の「物」として扱う気まずさ。もちろん植物も命ある生き物ですが、人間としてはやはり動物のほうに共感を寄せてしまう。 クロサキ : 機械的であるからこその抵抗もあるのかもね。それと食堂のシーン。
ペータくん : 猿についての議論ですね。 クロサキ : ジュスティーヌは動物にも自意識がある。人間と同じだ。と主張する。でも周りの学生たちはポカーン。
ペータくん : あの学生たちがヒドいやつらだ。とは、一概には言えないと思いますよ。時には動物を非情に扱うことも必要になる職業でしょうから。あえて割り切っているのかも。 クロサキ : いやー、でも、あれは単なる無神経だったと思う。獣医だからこそ、生き物に対する最低限の敬意は必要でしょう。
ペータくん : まあ、「自意識がある『という点では』」と強調していたら違うリアクションが返ってきていたかもしれませんね。で、そういった動物に関する描写や議論は、ジュスティーヌの変身《メタモルフォーゼ》に絡んでくると。 クロサキ : ジュスティーヌが「めざめ」ていく過程で、人間も動物である。ってことが観客にも克明に示されていく。性に目覚めるということは、獣の部分が解放されていくということでもあるから。
ペータくん : また、この映画では、「性欲」と「食欲」がより肉薄した形で描かれている。ただ、「動物」と「人間」の違いというのも確かにあって、人間には生来の欲望をコントロールする能力がある。 クロサキ : 「理性」だね。それでもって社会や集団にコミットしていく。それに今作は、セクシャルマイノリティについての物語でもあるよね。
ペータくん : 「食人」なんて、小児性愛者以上に社会からは受け入れ難い嗜好ですからね。でも、生まれ持った性質だから、切り離すこともできない。 クロサキ : 抑え難い、そして拭い去れない倒錯的な欲望とどう付き合い、社会で生きていくのか……ラストシーンで示された、毒も痛みも含んだ深い愛には、戦慄すると同時に感動したよ。
ペータくん : この物語は愛についての寓話であると。クロサキ : 実際に喰いちぎって咀嚼こそしなくても、好きな人の体を舐め回したい、かぶりつきたい。と考えるのはとても自然なことだからね。
ペータくん : 人間は赤ん坊や子供に対して「食べちゃいたいくらいかわいい」と言ったりもしますね。愛情表現として。 クロサキ : だから「食べたい」って感情が通ずるのは、性欲のみに限らないんだよね。もっと普遍的な「愛」にも通じている。
ペータくん : その流れで考えると、なぜお姉さんがジュスティーヌにアドリアンを「あげた」のか。そのあたりも興味深いところですね。他に好きだった点はありますか? クロサキ : なんというか、そういった攻撃的とも言えるアプローチの仕方もそうなんだけど、とにかく「カッコイイ」映画だなと思った。反骨精神を感じる部分も多くて。
ペータくん : 新入生いじめの描き方やそれに対するジュスティーヌのリアクションとか。 クロサキ : それと、厳格な両親への反発とかね。
ペータくん : 監督がパンフで言及している通り、先輩による新入生いじめにしろ、親の厳しい教育にしろ、それらは社会システムの一環に過ぎなくて、本来はそこに悪意や害意が介在しているわけではない。でも上から押さえつけられたら反発心を憶えるのが人情で、若者はそういった環境と感情に揉まれながらアイデンティティを築いていく。 クロサキ : でも同時に、監督は新入生いじめや家族に対して「倒錯したシステム」と言い、新入生いじめに関しては加えて「一種の悪」として描いていると発言している。それはジュスティーヌに観客が感情移入するための作劇的手法でもあるんだけど、同時に糾弾と問いかけでもあると思う。「社会の通念と個人の欲望、本当に倒錯しているのはどちらなのか?」って。
ペータくん : 「家族」に関しては教育云々だけでなくて、それそのものを「倒錯したシステム」と評しているのかもしれないですね。 クロサキ : 尖ってるよね~!そういうところにも痺れたんだよ。同時に、そういう多面的な視点でもって作られているからか、随所に優しさも感じる。
ペータくん : そういった点は、女医さんとのやり取りで感じましたね。クロサキ : 太った女の子についての話ね。社会とか集団に蔓延するグロテスクな通念を喝破している。
ペータくん : 社会や集団では「普通」であることを求められる。これもまたセクシャルマイノリティに通じる話ですね。 クロサキ : アドリアンはゲイだけど、作中ではわりとカジュアルにセックスを楽しんでたね。さすが同性婚が認められた国。
ペータくん : でもジュスティーヌは、彼に欲情してしまう。クロサキ : あの辺は青春ドラマとして切ないよね。頼み頼まれてセックスした挙句、アドリアンがキレちゃうシーンとか、痛々しくて観ていられない。
ペータくん : 「私を殴ればよかったのに……!」アドリアンの死体にしがみつくシーンとかも。 クロサキ : あそこは涙が出そうになった。あんまりジャッジするような観方はしたくないけど、ゲイの青年の描き方としても誠実だったと思う。まあ、別の意味で「都合の良い男」になっていたとは思うけど(笑)。アドリアン役の人って『パリ20区、僕たちのクラス』でデビューしてるらしいね。正直思い出せないんだけど、つまり完全な素人からあれがきっかけで芸能界に入ったんだ……そう思うと感慨深い。
ペータくん : ちなみに不満点は? クロサキ : うーん……濡れ衣を着せられて殺されたクイックがかわいそうだったな……
ペータくん : あれって、お父さんはジュスティーヌの仕業だと気づいていたんでしょうか? クロサキ : たぶんそうじゃない?犬だって同じ命で同じ家族なのに……ひどいよ!
ペータくん : 実の娘と同等の扱いを迫るのは酷でしょう。それに、だからといって粗末に描かれていたわけじゃないですし。クロサキ : その辺も人間の愛の寓話として興味深いね。
ペータくん : かわいそうと言えば、事故死させられる人たちのことはいいんですか?
クロサキ : あれは彼女にとって「狩り」だからさ。ハッキリと言わせてもらえば、遊びで動物狩る連中に比べればよっぽど好感がもてるよ。まあ、やられる方にしてみればどの道たまったもんじゃないけどさ(笑)
ペータくん : でも、「食人」が切実な欲求であることは描かれていましたが、それがどこまで生命に関わるのかは曖昧でしたね。食べないと死ぬ。というわけではなさそうだし。
クロサキ :その点に関しては、性欲と表裏一体なんだろうね。やっぱり。すると、「狩り」っていうより「強姦」ともいえるのか。やっぱとんでもねぇな(笑)。っていうか、あんなこと繰り返してて今まで捕まってなかったのが不思議だよね(笑) しかも劇中で直接描かれる箇所だと、ジュスティーヌちゃんが沢山の目撃者の前で証拠品を脱ぎ捨ててたし。ともあれ、ジャンルレスな描写と美しい映像、ショッキングかつ寓意に満ちたストーリー展開。それらが混然一体となって色濃くまとまった、叙情的でかつハイテンションでオリジナリティ溢れる大傑作であることに変わりはないでしょう。最高でした!
ペータくん : 主演のギャランス・マリリエもブレイクするでしょうね。可憐なルックスと恐れを知らない姿勢と確かな演技力は貴重ですよ。
クロサキ : 好きな映画作家に、リンチとクローネンバーグを挙げているのが良くも悪くもちょっと心配だけどね(笑)、監督もクローネンバーグからの影響を明言してるから色んな意味で相性が良いんだろうな。ちなみに監督、インタビューでは『悪魔のいけにえ』にも言及しているあたり本当に信頼できる(笑)
ペータくん : アルジェントっぽさも感じましたね。
クロサキ : 原色を多用した色彩感覚とかね。あと、今作、音楽も凄く良いんだ。メインテーマなんかはゴブリンの『沈黙』 を思い出させるメロディだったりして。
ペータくん : 映画『スリープレス』のテーマですね。
クロサキ : 歓迎会のディスコシーンで流れる歌とか、他の曲も良かったし、サントラほしいなー。
ペータくん : 映画を観る前と後では、普段見ている景色が変わりそうな作品ですね。
クロサキ : デュクルノー監督の、直接的な描写とショッキングなストーリーテリングで寓話を描く姿勢は素晴らしいけど、逆に、この人が撮ったファンタジーも観てみたいなと思った。あと、個人的なことぶっちゃけると、久々にセックスしたくなったよ!これぞ映画の力!
ペータくん : 台無しだよ!!
レビュー
★★★★☆

原題
Baahubali 2: The Conclusion
製作年:2017年
製作国:インド
配給:ツイン
上映時間:141分
映倫区分:G
監督:S・S・ラージャマウリ
製作:ショーブ・ヤーララガッダプラサード・デービネーニ
原案:V・ビジャエーンドラ・プラサード
脚本:S・S・ラージャマウリ
撮影:K・K・センティル・クマール
美術:サブ・シリル
衣装:ラーマ・ラージャマウリプラシャーンティ・トリピルネーニ
編集:コータギリ・ベンカテーシュワラ・ラーウタミンラージュバンサン・タベロン
音楽:M・M・キーラバーニ
出演:
シヴドゥ/バーフバリ :プラバース
デーヴァセーナ :アヌシュカ・シェッティ
パラーラデーヴァ :ラーナー・ダッグバーティ
シヴァガミ :ラムヤ・クリシュナ
ビッジャラデーヴァ :ナーサル
カッタッパ :サティヤラージ
アヴァンティカ :タマンナー
あらすじ:
伝説の戦士バーフバリの壮絶な愛と復讐の物語を描いてインド映画史上歴代最高興収を達成し、日本でもロングランヒットを記録したアクション「バーフバリ 伝説誕生」の完結編となる第2作。蛮族カーラケーヤとの戦争に勝利してマヒシュマティ王国の王に指名されたアマレンドラ・バーフバリは、クンタラ王国の王女デーバセーナと恋に落ちる。しかし王位継承争いに敗れた従兄弟バラーラデーバは邪悪な策略で彼の王座を奪い、バーフバリだけでなく生まれたばかりの息子の命まで奪おうとする。25年後、自らが伝説の王バーフバリの息子であることを知った若者シブドゥは、マヘンドラ・バーフバリとして暴君バラーラデーバに戦いを挑む。監督・脚本のS・S・ラージャマウリや主演のプラバースをはじめ、前作のスタッフやキャストが再結集。(
映画.comより)
(※以下、ネタバレに配慮していません)クロサキ : いやー、まさに「痛快無比!」
ペータくん : これは確かにすごいですね。話題になっているだけのことはある。 クロサキ : 予告編で「映画の面白さ、ここに極まる」って言ってたけど、本当にその通りだと思ったよ。
ペータくん : ライムスター宇多丸さんもラジオで言ってましたが「そもそも映画とは?娯楽とは?面白さとは?」なんてことまで考えちゃう作品ですね。 クロサキ : キメ画やアクションのアイデアの凄まじさとか、美点がとにかく沢山ある映画だけど、個人的にとても興味深かったのは、物語上の手続きの処理の仕方かな。
ペータくん : 「物語上の手続き」? クロサキ :展開を進めるうえで必要な説明や描写のこと。この映画ってグダグダしている箇所がほぼ無いんだよね。
ペータくん : なんでもかんでもセリフで説明しようとする作品には見習ってほしいですね。 クロサキ : キャラクターの内面や感情はすべて行動で、つまり「アクション」と共に描かれる。「画が動くこと」……これすなわち「アクション」であり「映画」!
これは会話シーンも同じ。芝居やカメラワークや特殊効果等を含めた「動く画」でもって表現されている。だからお話が停滞しない。
ペータくん : 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と同じ作りですね。キャラクターのエモーションが、そのままそのシーンのアクションに直結している。ただ、それゆえに「バカっぽい」。もしくは悪い意味で「漫画みたい」とも揶揄されがちですが。 クロサキ :でもどちらの作品も、実はかなり練り込まれて作られているんだよ。そうしなきゃ成立しない。批判的なニュアンスで「バカ映画」と笑い飛ばしている人は、シチュエーションや小道具の活かしかたに注目してほしい。
ペータくん :『マッドマックス』での砂嵐のシーンを思い出しますね。あのシークエンスで表現されているのは視覚的なインパクトだけじゃない。マックス達の進行の障害であるのはもちろん、それ以上に、ウォーボーイズたちのエモーションを表現するための場面設計になっていた。
クロサキ : 「What a Lovely Day!」
ペータくん : 小道具でいえば「種」 に込められた象徴性も素晴らしかったですね
クロサキ : 「弾丸は『死の種』よ」というセリフがある一方で、後半では「植物の種」が登場する。あの作品はいわゆる『行きて帰りし物語』の構造を取っているんだけど、行きと帰りでは、作中のいろんな要素に込められた意味が反転していくんだよね。後半でも「死の種」たる弾丸は敵味方の間で飛び交っているんだけど、マックス一行には「植物の種」が握りしめられている。「行き」の逃避行では緑の地という楽園への希望が打ち砕かれた……だけど「帰り」では新しい希望を胸に真の楽園を目指し、女性たちが自分たちを虐待してきたクソ野郎どもに反撃するんだよ!
ペータくん : わかったから、ちょっと落着きなさい。あと「輸血チューブ」の反転も泣かせましたね。
クロサキ : 「My name is ……」 くあー!やっぱ『マッドマックス』は最高だぜ!!
ペータくん : 燃えるのはいいけど、今回は『バーフバリ』の話だってば。パラーラデーヴァの金像をデーヴァセーナが踏みつけて進むところが痛快でしたね。小道具というより大道具でしたけど。
クロサキ : 個人的には弓のくだりが好きだな。
ペータくん : バーフバリとデーヴァセーナの馴れ初めですね。
クロサキ : 「射方を教える」っていう展開自体も伏線の回収で、それも良いんだけど、プラス、あれって披露宴のケーキ入刀みたいなものなんじゃないかと個人的には思っていて……
ペータくん : 「はじめての共同作業」ってやつですか。
クロサキ : そうそう(笑) あと、デーヴァセーナのハートを打ち抜いたのも矢なんだよね。
ペータくん : 実際に刺さりこそしませんが、その風圧でイヤリングを揺らすという形で表現している。
クロサキ : 風の使い方も全体的に良かったよね。ほかにも雷とか炎とか、自然現象で効果的にシーンを盛り上げているのが素晴らしい。
ペータくん : だからこそ「バカらしい」と見られがちなんだとも思いますが。
クロサキ : たしかに「わかりやすっ」「んなアホなw」って突っ込んだり笑ったりしちゃうところは沢山あるよ。でもね、シーンの意図や登場人物の内面を映像だけで的確に、なおかつ明確に表現するって、一番難しいことだと思うんだよ。そして実はそれこそが、映画における理想の語り口なんだよね。
ペータくん : トリュフォーがヒッチコックを称賛する言葉にも通じますね。
「アルフレッド・ヒッチコックは、疑惑とか嫉妬とか欲望とか羨望とかいった諸々の感情を、そのものずばり、ということは説明的な台詞などにまったくたよらずに、描きうる唯一の映画作家となって今日に至っているというのが、ほんとうのところだ。
(中略)
すなわち、その作品の単純明快さによって最も大衆的な映画監督であるアルフレッド・ヒッチコックは、じつは、同時に、人間の最も微妙な感情や関係を描くことに最も卓越した映画作家であるということなのである。」と。

クロサキ : 描かれる感情の一つは一つは単純かつ明確でも、それらが積み重なることによって全体に様々なニュアンスや文脈が生まれていく。もちろんこれは、方法論として何ら特別なことではないんだけど、『マッドマックス』や『バーフバリ』の場合、その緻密さ、そしてそこから生まれる画面の迫力や面白さが他の映画と一線を画しちゃってる。
ペータくん : しかもそれが全編に渡って続きますからね。クライマックス級の見せ場が続きながらもストーリーラインが滑らか。
クロサキ : でも、同時に言っときたいんだけど、台詞もすっごくいいよ。どちらの作品も。
ペータくん : 『マッドマックス』では台詞量が少ないながらも、そこにさまざまな意味が持たされていましたね。何気ない台詞に、そのキャラクターが歩んできた背景が垣間見えてくる。
クロサキ :『バーフバリ』の登場人物は寡黙でこそないけど、台詞ひとつひとつが必要最低限で力強い。
ペータくん : カッタッパが盗み聞きするシーンが良かったですね。
クロサキ :「き、貴様、聞いていたのか……!?」
ペータくん : 「いいえ。私は犬。嗅ぎつけました」
クロサキ : 最っ高だよね!この小気味よさと痛快さ!こういうやり取りで連続して進むから、ひたすら面白いし、シーンや展開も力強い。王道娯楽活劇かくあるべし!!
ペータくん : 王道といえば『バーフバリ』のお話も、構造は古典的ですよね。
クロサキ : 各所で言われている通り「貴種流離譚」だね。個人的に「貴種流離譚」と聞いて最初に思いつくのは『どろろ』だな。
ペータくん : あれは王道でかつショッキングでしたね。目鼻口手足がない赤ん坊が川から流れてくるという……
クロサキ : まあ、英雄神話だよね……なんて知ったかぶりするほど詳しいわけじゃないけども。
ペータくん : そういう勉強、ちゃんとしないとね。
クロサキ : でも「古典」って、普遍的でもあり古くもあるものじゃない。だから現代の視点で見ると違和感を感じることも多いけど、『バーフバリ』はちゃんと現代的だったね。
ペータくん : 女性が全員強いですしね。「女性を人形のように扱うのは……」というセリフも入っている。
クロサキ : それを一蹴するのが女性であるシヴァガミであるというのも面白い。対して、デーヴァセーナは自分の尊厳のために徹底的に反抗する。この嫁姑バトルが素晴らしかったね。
ペータくん : そういった現代的な配慮というか価値観を自然に取り入れつつ、勧善懲悪で君主的な英雄物語を成立させているのが凄い。これからの活劇の見本になりそう。
クロサキ : 「ポリティカリーコレクトネスにはウンザリだ!」とか言ってるどこぞの大統領にも観てほしいよ。あ、その点で言えば、個人的には『伝説誕生』のほうでグッときたシーンがあった。戦を前にして牛をいけにえ捧げる儀式があるんだけど、バーフバリはそれを拒否する。
ペータくん : 「罪なき獣の血を流すことはない」と、自らの血を捧げるんですよね。
クロサキ : あそこで「バーフバリ!バーフバリ!」って叫びそうになったよw
ペータくん : 去年の『ドラクエ11』もそうですが、何者もロールモデル足りえないこの時代でも、万人向けの王道をやることは可能なんだ。と、証明されてしまいましたね。
クロサキ : それはそれとして、あのいけにえシーンって完全にヤコペッティの『世界残酷物語』だったよね(笑) 牛を殺さない展開は素晴らしかったけど、それはそれとして、首チョンパにはどうしても興奮してしまう(笑)
ペータくん : 危ない人だなぁ。それに『世界残酷物語』はネパールのグルカ族でしょ。まあ、南アジアってところは共通してますが。じゃあ今作は、全面的に絶賛ですか。
クロサキ : いや、ラスト周辺が結構不満。
ペータくん : というと?
クロサキ : ラストバトルに至るまでにさんざん凄いアクションを見せられてきたからさ、最後にはさらにすごいものを期待しちゃうじゃない?
ペータくん : 「じゃない?」って僕に聞かれても。でも、オープニングの儀式が反復される展開と構成は見事だったと思いますよ。
クロサキ : そこは良かった。でもアヴァンティカやカッタッパの活躍が薄いのがなぁ……戦隊ものみたいに、四天王とか将軍とか、パラーラデーヴァ以外にもそういう大ボスキャラを用意して、総力戦として盛り上げてほしかったよ。
ペータくん : それに、ラストシーンは静かに終わりますね。
クロサキ : そう!そこも不満。
ペータくん : でもあの滝に打たれる石碑は前作の冒頭部と対になっているから、必然のショットだとも思いますけどね。
クロサキ : それ自体は良いんだよ。静謐な余韻が悪いわけじゃない。ブツ切りで短いクレジットも割と好みだった。でもさ、その前と後どちらでもいいから、王国を奪還した歓喜を表現するド派手なオールスターミュージカルをやって欲しかったんだよ……!! またあの主題歌を流してくれるって信じてたのに……!! バーフバリ!バーフバリ!!
ペータくん : 「信じてたのに」って言ってもなぁ。勝手な期待ですからね。でもいま言ったような不満点はもしかしたら、あと30分あるという完全版で補完されているかも……
クロサキ : 『ロード・オブ・ザ・リング』のエクステンデッド版と同じだよ。完全版を観るまではホントの評価は保留ってことで!
レビュー
★★★★
クロサキ : やあやあ、どうもどうも。
ペータくん : ……なんですか、コレ? クロサキ : このブログ、今回からチャット形式になったんだよ。
ペータくん : 気でも狂ったんですか? クロサキ : それ、同じ形式でブログをやっている人に失礼だよ!
ペータくん : 他のブロガーさんたちは、何かを表現したりアピールしたりするための解りやすい形としてやっているんであって、ダラダラと自己満足を吐き出すなら普通に一人称で書くのでは。 クロサキ : まあ、一種の瞑想みたいなもんだと思ってもらって
ペータくん : 迷走の間違いでしょ。 クロサキ : そりゃいつまで続くかはわからないけどさ……まあ、そんなことばかり言っててもしょうがないんだよ!本題本題!
ペータくん : 本題って言ってもなぁ……まあいいや。今週はどうでした? クロサキ :相変わらず、映画観たり、ゲームしたり……
ペータくん : 進歩ないなぁ。あなた、あと二年半以内に長編小説仕上げるつもりなんでしょ?絵の勉強もするって言ってませんでしたっけ? クロサキ : どっちも始めてはいるんだよ!でもまあ、なんというか、人間根付いた性質はそうそう変わらないもんだよね。
ペータくん : ナマケモノなだけでも救い難いのに、それを開き直り始めてるんだから相当な末期ですね。自業自得でも困るのは自分だけって年でもないんだから、いい加減ちゃんとしなさいよ。クロサキ : すみません。ちゃんとします!明日から!
ペータくん : ダメだこりゃ。 クロサキ : とりあえず部屋の掃除をするよ。この年になってやっと実感してるけど「部屋の乱れは心の乱れ」ってホントだね。メンドくさいけどさ。
ペータくん :平山夢明さんも「面倒くさいは狂いの始まり」って言ってましたし、ちゃんとしなきゃですね。
クロサキ : 今週劇場で観た映画2本はどっちもかなり面白かったよ。
ペータくん : 『バーフバリ 王の凱旋』と『RAW ~少女のめざめ~』。まあ、どっちも前評判が高いですからね。クロサキ : かたやエンターテイメントの、かたや食人映画の、それぞれ歴史に残る大傑作だったと思うよ。でも、個人的に刺さったのは圧倒的に『RAW』のほうだね。観てから数日経った今も、あの映画のことを考え続けてる……
ペータくん : まあ詳しい話は個別記事でグダグダやればいいでしょう。 クロサキ : いま観たい映画が多すぎるんだよね。『パディントン2』と『悪女/AKUJO』は劇場で見ないと後悔しそう。
ペータくん : 悲しいかな。お金がないから当面はその2本だけですね。でも『パディントン2』はそろそろヤバいのでは? クロサキ : どこも遅い時間はやらなくなってきてる。上映あっても吹き替え版だったりして(シクシク)
ペータくん : 一作目も面白かったけど、それを遥かに超えてるって噂ですね。みなさん大絶賛。 クロサキ : しかもヒュー・グラントが出てるんだよ。
ペータくん : いつの間にファンになったんですか? クロサキ : 一昨年の『マダム・フローレンス』での演技が素晴らしくって……活動休止を経て復帰してからのほうが、圧倒的に良い役者っているよね。 竹内結子とか。今回、ニコール・キッドマンが出てないのがちょっと残念だけど。あと、 『グレイテスト・ショーマン』も気になってるんだよなぁ……ヒュー・ジャックマン主演のフリークス・ミュージカル!!
ペータくん : コラコラ。でもフリークスといえば、一番の楽しみは来月の…… クロサキ : 『シェイプ・オブ・ウォーター』!!自他共にギレルモ・デル・トロの最高傑作と称されているアカデミー賞大本命!!今年一番楽しみしている映画だよ!
ペータくん : 傑作には違いないだろうけど、期待値上げすぎないようにしないと。『スリー・ビルボード』とどっちが獲りますかね? クロサキ : 『スリー・ビルボード』は俺も大好きな映画だけど、応援したいのはやっぱデルトロ! 監督賞は固そうだね。
ペータくん : 監督賞の対抗馬は初ノミネートのノーランみたいですね。『ダンケルク』で。クロサキ : ノーランはヤだ!
ペータくん : 出ましたよ。ノーラン嫌い。 クロサキ : 嫌いってほどじゃないけどさ……どれも面白いといえば面白いし『ダークナイト』は大傑作だし……でもデルトロが相手となれば、そりゃあデルトロを応援するよ。
ペータくん : っていうかあなた、『ダンケルク』観てないでしょ。
クロサキ : 『インターステラー』もねw 一応どっちも期待してるよ。
ペータくん : 『インターステラー』なんて何年前の映画だと思ってるんですか。 クロサキ : でもどうせ、小賢しい仕掛けがあるんだろうなぁ。
ペータくん : 別にいいでしょう。映像が凄くて上映中面白ければ。クロサキ : まあね。それと上映時間が短ければ……
ペータくん : ハイハイ。とはいえ日本からすると未公開の作品が多いから、映画ファンとはいえ、アカデミー賞って盛り上がり辛いのが難点ですね。 クロサキ : ノミネート作、一通り観た感じ、どれも面白そうだけどね。『デトロイト』が入ってなかったのが気の毒だったなぁ。
ペータくん : まあ、ビグローの作風自体、毎回評価が割れるところですしね。デリケートな題材でもあるし。 クロサキ : でも、暴動時のデトロイトを再現したあの臨場感はスゴかった……。撮影賞とか、技術賞に入ってないのはおかしいと思う。
ペータくん : と言っても、僕もあなたも専門知識があるわけじゃないですからね。まあ、クオリティの高さ自体は評価されてるでしょう。 クロサキ : ラストシーンも素晴らしかった。教会で歌い上げるラリー・リードの横顔は今でも焼き付いてるよ。
ペータくん : 強烈なメッセージ性……なんか、思った以上に筆が乗ってますが、そろそろ切り上げて掃除したほうがいいのでは。 クロサキ : あっ、そうだね。とりあえずさよなら!
ペータくん : はやっ! 次回、いきなり僕は消えているかもしれませんが。
レビュー